“道”

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今まで心弥とこんなにぶつかり合ったことはなかった。 だからどうしていいのか分からず、とにかく言い返すことしかできなかった。 「もういいから…」 「何がもういいの?」 「いいから、出てってよ…頼むから…」 このままだと俺、心弥まで… 心弥まで… 「ちゃんと僕の目を見て。」 その一言が… 俺にとってとても重くのしかかった。 目を見るのが… 怖い… 「お願いだから…もう、勘弁して…」 心弥が怖い… これ以上… しかし心弥はそんなのお構いなしにどんどん歩み寄ってきた。 「来るな…」 「………。」 「来るなって言ってんだろ…っ」 「………。」 イヤだ… イヤだ… イヤだ!! 自分でもどうして心弥がこんなに怖く感じるのか分からなかった。 ただ本能なのか… あの記憶が蘇る。 「や…来るな……来ないでっ!イヤだ、イヤだイヤだ!…助けてっ……」 壁際まで身を寄せうずくまった俺に… 温かい手が触れた。
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