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月が雲に隠れた。
冷たい風が木々を揺らした。
重々しい雰囲気が屋敷全体を包んだ。
「…以上が、僕の調べたネロの事だよ。」
「まぁ…。」
「う゛ぉ゛ぉい…」
「王子ビックリ…。」
ボスへの報告の後、幹部組へネロの事を話した。
過去の事。
生い立ち、能力、ファミリー、そして…性処理機だった事。
皆の視線は必然的にネロに集まった。
ルッスーリアの隣に座っていたネロは俯き、黒のレースの沢山付いたスカートの裾を握っている。
「…僕は、」
震えた声で話し出した。
拳に水滴が落ちたのが確認できた。
…泣いてる。
ツキン、と僕の体内で何かが動いた気がした。
「…僕は、マーモン様が言った通り、モルモット…でした。」
「あの実験室で、何度も知らない男の人を受け入れて、何度も知らない男の人を受け止めて。
泣いて、
叫んで、
壊されて、
絶望、して。
…でもやっと、僕は、生きてるんだって実感、出来る場所を見つけて。
ここで、生きたいっ…。
お願い、します…。
僕を、捨てないで!
ここに居させて、くださッ…。」
必死に言葉を繋いで
懸命に気持ちを表して
生きたい、と
涙を流す。
「…当たり前だよ。」
君を捨てる訳ない。
「君はここに居ればいい。」
知らない間に君は僕達の心に入ってる。
「君の居場所はここにあるんだ。」
もう、手放せなくなっている。
「ここで生きなよ。皆いるからさ。」
ネロの顔が上がった。
涙でグチャグチャの顔には満面の笑みがあった。
「…ありがとう、マー様。」
無意識の内に頬が緩んだ。
この感情は、何なんだろう。
凄く、暖かい。
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