第三章

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白い、靄の中を歩いている。 これが夢だと分かるまでに時間はかからなかった。 一歩ずつ、柔らかな道を踏み締める。 体は何処かに向かっている。 僕は遠くからその光景を見ている。 …変な感じ。 不意に僕の体が止まった。 何処か一点を見つめている。 …誰かが、立っている? その人の顔はこの靄のせいで霞んでいる。 それでも、その人が泣いている事だけは解った。 (貴方は…誰?) 「──は、───す。」 聞こえないよ。 何て言ったの? 「俺───、───す。」 その人…その男の人は 靄の中に溶けていった。 「俺達は、ずっと待ってます。」 ただ、一言を残して。 (誰?) (貴方は誰?) (何処か、懐かしい。)
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