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「う゛ぉ゛ぉいネロ、ソイツラは?」
「アロ様。…この人達は侵入者です。出て行く事を拒否したので…。」
夜、不意に血の臭いが漂ってきた。
それも半端無い量の。
以前、侵入者によって雇っていたメイドが半分以上殺された事があった。
メイド自体は俺的にどうでも良かったが、我儘王子(ベル)や超俺様ボスが生活出来なくなって大変だったのだ。(朝起きる時から夜の世話まで全てメイドで賄ってたからな。)
とりあえず、今回もあんな面倒な事になるのは御免だ。(主に八つ当たり)
メイドの数が残ってる内に侵入者を殺してしまおうと血の臭いを辿った。
しかし、俺が見たのは紅い血化粧を施したネロだった。
白い肌に溶け込むような真っ白いTシャツを身に纏い、侵入者の髪を掴んでいた。
侵入者の体はその場に無かったが。
その他にも、一般人ならば失神してしまう程の状態の死体の山。
その中心にネロは佇んでいた。
「…う゛ぉ゛ぉいネロ、ソイツラは?」
俺の声にネロは此方を振り向いた。
綺麗な金色の髪は紅黒い侵入者の体液で汚れている。
「…アロ様。この人達は侵入者です。出て行く事を拒否したので…。」
そう言って手に持った首を軽く投げた。
絨毯が吸いきれなかったのであろう血が、その首を受け止めた。
濡れたような生々しい音が聴覚を支配した。
「アロ様、此処は大丈夫です。もう少しお休みになられて下さい。」
そう言ってネロは微笑んだ。
その笑顔には、多少の殺気が含まれていた。
ち か づ か な い で
何故だろう。
今まで散々自分は否定されてきた。
仕方ない。
自分は暗殺者なのだ。
自分は人殺しなのだ。
拒否されても仕方ない存在なのだ。
だから、今まで必要以上に近づかなかった。
だから、今まで必要以上に馴れ合わなかった。
離れるとき、情が移らないように。
なのに。
今の俺はなんだ?
たった一人の男、それも子供に否定されただけで。
こんなにも、心が悲鳴を上げている。
…情けねぇ。
「…う゛ぉ゛ぉい、俺は寝るぞ。」
「はい。」
「…死体(ゴミ)片付けてからなぁ。」
「…え?」
「あ゛?手伝ってやるっつってんだぁ。」
本当は分かってる。
こんな気持ちになる理由も
こんなにも胸が痛む理由も
でも、今はまだ認めない。
認めちゃいけないんだ。
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