167人が本棚に入れています
本棚に追加
「チィッ…不甲斐ねぇ奴等だぜぇ…」
俺は頬を伝う返り血を袖で拭い、もう動く事の無い侵入者の一人に足をかけた。
ビチャ、と血を吸ったスーツが重い音を起てる。
つん、と生臭い血の匂いが体にまとわり付くのを感じた。
その匂いに少し嫌になって視線を足の下の死体から外す。
ふと、視界の端に白い何かを捕らえた。
今、間違いなく殺した死体から見えていた。
自分で言うのも何だが…侵入者の体は全てズタボロに引き裂いた。白、何て色残る筈無い。
総てが、紅く染まっているから。
「なんだぁ…?」
俺はその白い何かを確認する為に死体から足を離し歩き始めた。
足を離す際力が入って死体が嫌な音を起てたのは気にしない。
一歩、一歩。
少しずつ近付く。
ふわり、と濃厚な甘い香りが鼻を掠める。
何故?
何故花の香りがする?
答えは明確だ。
その白い何かが花だったから。
それも、どこに隠していたのだろうか、夥しい程の量の。
「…なんだってこんなモンを…?」
残念ながら俺は花の種類など解らない。
ただ、その白い花を屋敷の中に持って行くのは気が引ける。
もし、この花が毒を出すもんだったりしたら…
…嫌な奴が死ぬかも知れねぇが、アイツが
ネロが死ぬのは耐えられない。
「…チィッ…」
自分も相当末期症状だとゆうことに今さら気付く。
あんなに認めたくなかったアイツへの想いもスッと胸に入ってきた。
嫌ではない。
寧ろ、心地好い感覚が体を支配した。
「…なんだってこんな…」
一人の人間に夢中になってんだ俺は。
小さく溜め息を吐きながら俺はこの花の処理法を考えることにした。
最初のコメントを投稿しよう!