第一章

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「ボス。」 ヴァリアーのとある部屋で僕は立ち止まった。 中にいる御方、ボスの機嫌を探るつもりで僕は話し掛けた。 「…入れ。」 どうやら機嫌は良いらしい。もし機嫌が悪かったらスクアーロみたいに殴られるからね。 それは避けたかった。 まぁ、それも通り越し苦労だったけど。 「…任務かい?」 暗い部屋の中、ボスの紅い目が此方に向けられる。 「…そこにある資料に目を通しておけ。」 「報酬額は?」 フンッと鼻で笑うボス。 「出来次第で幾らでも出すんだと。」 「…は?」 「気の狂った糞ジジイからの依頼だ。巧く行けばSランクの5倍は貰えんだろ。」 糞ジジイ…9代目からの依頼? 「…殺るのか、殺らねぇのか、ハッキリしろ。」 ボスの紅い目が更に鋭くなる。 答えは決まっている。 「殺るよ。僕の幻術で生地獄をあじあわせてあげるよ。」 8年前のリング争奪戦で逃げた事の償いとして、僕は絶対任務を断らない。 …報酬額の安い任務は勘弁だけどね。 ボスがまた鼻で笑う。 そんなボスを横目に僕は資料に目を通し始めた。 (ターゲットはドイツ人。) 蒼い瞳に金髪。 堀が深い親父。 …これで後20キロ位体重を落として、脂ぎったニキビ面じゃなければ、中の下位になる。 言ってしまえば気持ちが悪い親父だった。 (…ボンゴレのシマで人身売買?そりゃあ9代目が怒るよ。) 穏健派の9代目に暗殺の依頼させる位だ。 もう少し探り入れれば何か出てくるかな。 もう少しで資料が読み終わる。 ラスト1枚… ……‥‥ん? 僕の読み間違いだろうか。 「…ボス?」 「読み間違いじゃねえよ。」 ターゲットは男色家だ。 「…クフフ…」 思わず出てしまった南国果実の笑い方。 ああ。段々僕のキャラがおかしくなっていく。 「ボス、報酬額、Sランクの8倍良いかな?」 「…好きにしろ。」 …頑張ろう。 お金のために。 「じゃあ、もう少し詳しく調べてから行ってくるよ。…明日には出発するさ。」 僕はひらりと資料を振ると部屋を出ていった。 ああ…面倒くさい。
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