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カタ…カタカタ…
薄暗い部屋の中に浮かび上がるディスプレイ。
その画面は無数の文字で埋め尽くされている。
「何こいつ…簡単すぎじゃないか?」
軽いキーワードでこれだけの資料が引っ掛かる。
マフィアを馬鹿にしてるのだろうか。
「しかも大体に男色家の事書いてあるし…。」
ああ、気持ち悪い。
それにしても資料が多すぎる。…少し絞るか。
キーボードの上を指が走る。
「…で、エンター。──…こいつ…馬鹿じゃないの?」
まさか、ターゲット本人のブログが見つかると思わなかった。
これは流石に厳重にロックが掛かっているけど。
…と言うか、普通に考えて裏世界の人間がブログなんか作るなよ…。
「舐めないでもらえるかな。」
再びキーボードの上を指が走った。
ピーッピッピッ…
ピー
「ロック解除。」
不敵な笑みが溢れた。
「…流石にこれは予想外だよ。」
沢山の写真。
全てがとある人の写真。
否、これは、人なのか?
金色の絹糸のような細い髪。
髪と同じ色の大きな瞳。
筋の通った鼻。
桜色の薄い唇。
写真でも分かるほどのキメ細やかな白い肌。細い手足。
凄い美人な男の子。
ただ、彼の耳が獣の耳である事と、尾てい骨辺りから伸びる金色の尻尾が無ければの話だが。
写真の中で彼は酷い扱いを受けていた。
強いて言うならば
性奴隷
僕はヴァリアーのコートに腕を通した。
深くフードを被るとファンタズマが頭に乗った。
今回の任務は、キショイ最低な男の暗殺、及び写真の男の子の保護。
あの男の子は、僕の勘が正しければ人体実験の末に出来た云わば人形って所だろう。
ただ、売られて奴隷として生きるだけの人形。
「行こう、ファンタズマ。」
今回の任務に、少しだけ怒りを感じた。
正直な話、今まで幾つもの組織を潰してきて、その中で造られた玩具(やつら)を何人も見てきた。
南国果実や、その取り巻き二人もそう。
確かに、そのような事をした人間に腹が立ったし、ソイツ等に対する同情心も無かったわけではない。
ただ、今回の。
今回のターゲットは違う。
心底殺したいと思ったし、あの実験体も同情なんかじゃなく助けたいと思った。
…何故か分からないけど。
胸の奥から怒りが沸き上がって来るんだ。
「…ああ、ムカつく。」
きっと、ターゲットがあまりにも僕らを馬鹿にしすぎたからだ。
スッキリしない気持ちを抱えたまま、僕は夜の街を駆け抜けた。
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