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この街に来て1年。
早いようで短い。
そう感じるのは、俺がまだあの人を忘れていない証拠なのかもしれない…。
「矢城、悪いがこっちの客の応対任せた」
狭いカウンター内ですれ違う時、オーナー兼マスターである凱さんに耳打ちされる。
此処は『Bar BlueMoon』
月曜の夜ということもあり、店内の客はまばら。
それでも、カウンターにはそこそこ客が座っている。
「いらっしゃ……」
それっきり言葉が続かない。
客の顔を見て、思わず逃げたい衝動に駆られた。
凱さんに任せられた客は、俺がこの1年の間、忘れようとして忘れられなかった恋人、檜垣雅隆。
何で雅隆さんが此処に…?
「元気そうだな」
ロックグラスを弄びながら、雅隆さんは以前と変わらない口調で俺に話かけてくる。
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