すべて愛だった

１

やがて車は、マンションの前で停止した。

「明日は迎えに来なくていい」

坂城さんにそれだけ言うと、雅隆さんは俺の腕を掴み車から降りた。

そのまま足早にエントランスに向かい、オートロックを解除して、エレベーターのボタンを押す。

待つまでもなく、エレベーターの扉が開き、腕を掴まれたまま中に引っ張られる。

「離して下さい」
ここまで来た以上、逃げるつもりはない。
だけど、雅隆さんが腕を離してくれる気配はなかった。
それどころか、凄く怒ってる。

怒るのも当然だよね。
だって、何にも言わずに出て行ったんだもん。

微かな振動を伴い、エレベーターが停止し扉が開く。

雅隆さんの部屋のドアの前まで来ておきながら、怖くて中に入ることができない。

そんな俺に痺れを切らせたのか、雅隆さんは片手でドアを押さえたまま、俺の肩を掴み、部屋の中へと引き入れた。

背後でドアが閉まる金属音が聞こえる。

俺は背中を壁に押し付けられた状態で、雅隆さんに唇を奪われていた。

「……っ…ふ…」
上手く呼吸が出来ない。

それぐらい激しい口づけだった。