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「何で……?」
雅隆さんの唇が離れると同時に、俺は問いかけていた。
俺をこのマンションに連れて来たのは、荷物を処分させる為じゃなかったの?
「私が別れ話をする為に、ここに連れて来たとでも思ったのか?」
図星だったから、返す言葉もない。
「どっちにしろ、玄関先でする話しでもない。来い」
肩を抱かれたまま連れてこられたのは、以前と何一つ変わらないリビング。
俺をソファーに座らせると、雅隆さんはリビングから出て行ってしまった。
確かに別れ話をするのなら、わざわざ雅隆さんのマンションに来なくても、俺のアパートで十分だよな。
荷物だって、郵送すれば済む問題だし…。
まさか……。
「そんな事あるはずない」
浮かんだ可能性を振り払うように頭を振れば、酒のせいかクラクラする。
「一人で何を遊んでいるんだ」
現れた雅隆さんの手には、ブランデーと氷の入ったグラスが2つ。
「飲むだろう」
そう言われてしまうと、断るわけにもいかない。
「いただきます」
俺がそう答えると、慣れた手つきでブランデーをグラスに注いでくれる。
「改めて乾杯だな」
グラスを合わせ、ロックのままのブランデーを一気に飲み干す。
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