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どれぐらい飲んだのだろう。
封を開けたばかりのボトルの中身は、すでに半分以上減っている。
「何故、私から逃げた?」
「答えたくないと、言ったはずだよ」
確実に酔っている。
どう考えても、許容量をオーバーしているのは間違いない。
「そう言えば、私が引き下がると思っているのか」
「まさか」
そう。
雅隆さんは、そんなに甘い人じゃない。
「なら、答えてくれるな?」
「イヤだ」
言いたくない。
それを言えば、俺は自分の弱さを告白することになるから…。
決して俺は、プライドが高いわけじゃない。
だけど、雅隆さんにだけは、弱味を見せたくないという意地がある。
「雅隆さんと俺って、別れてるんだよね?」
俺がこのマンションから逃げ出した時点で、恋愛関係は終わっているのだと思いたい。
「残念ながら、私は別れたなどと思っていない」
来る者拒まず、去る者追わず。
少なくとも、俺の知る檜垣雅隆とはそういう男だ。
そして、裏切り者には容赦しない男。
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