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「残念だったな」
その声はとても冷酷で、なのに、これ以上にないぐらい甘い。
「俺と別れてよ」
「悪いが、私が聞きたいのはそんな言葉じゃない」
噛み合わない会話。
すでに空になっていたグラスに、俺は手酌で酒を注ぐ。
「俺、好きな人がいるんだ」
咄嗟に嘘を口にした。
別れてくれないと言うのなら、別れてくれるように仕向けるしかない。
プライドの高い雅隆さんの事だから、こう言えば別れてくれるはず…。
「相変わらず嘘が下手だな。そこまで意地を通されると、どうしても聞きたくなるのが人の常。私の性格をきちんと理解していなかったみたいだな」
ぞっとするほど低い声。
反射的に逃げようとした俺の身体は、簡単に捕まり雅隆さんに組み敷かれてしまった。
「……やぁ…っあん」
アルコールで火照った身体は、耳を舐められただけで簡単に反応してしまう。
「感度は変わっていないようだな」
「あっ…ん…やぁ…だ」
身体を捩って逃げようともがくけど、上から押さえられているのと、酔っているせいで身体に力が入らない。
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