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寝返りをうとうとした俺は、腰に激しい痛みを感じて目が覚めた。
昨日の情事の痕跡は綺麗に消え、真新しいシーツに変えられていた。
そして、手首のベルトは外され、変わりに包帯が巻かれていた。
身体にも気持ち悪い箇所はない。
意識を失っている間に、雅隆さんが清めてくれたのだろうか?
それ以外に、そんな事をしてくれる人はいない。
「はぁ…」
いくら何でも、あの言葉は言うべきじゃなかった。
ベッドの中での睦言、なんて考えてくれないよな。
隣で眠る雅隆さんを起こさないように、もう一度こっそりとため息をつく。
「起きたのか」
いきなりかけられた言葉に、心臓が止まるかと思った。
「いつから起きてたの?」
気配に敏感な雅隆さんの事だから、もしかしたら俺が起きた時には、目を覚ましていたのかもしれない。
それでも尋ねてしまったのは、ため息を聞かれたくなかったからだ。
「お前が寝返りをうとうとした時からだ。ため息の理由は、後悔しているからなんだろう?」
隠すだけ無駄だったみたい。
しっかりお見通しなんだもん。
「だからって、お前を逃がすつもりはない。ましてあの言葉を聞いた以上、尚更だ」
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