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「啼かされたくなければ、大人しくベッドに居る事だな。すぐに朝食の支度をしてやる」 さっさとベッドから降りると、それだけ言い残して雅隆さんは部屋から出て行ってしまった。 ドアが閉まる音を確認して、俺はゆっくりと息を吐き出した。 たった1ヶ月で居場所がバレたうえ、わざと野放しにされていたなんて…。 さらに、マスターまでが共犯。 だとしたら、雅隆さんが店に来たのも、俺が早退させられたのも、全部仕組まれた事だったんだ…。 涙は出てこない。 マスターのあの優しさが、偽りじゃないと俺は知っているから…。 ただ、悔しいだけ。 このマンションに連れて来られた上、雅隆さんに俺を離す気がないと知った以上、ここから逃げ出す事は不可能だ。 着せられているパジャマの襟からは、昨夜の情事を示すように、幾つもの赤い痕が見える。 「何であんな事を言ってしまったんだろうな」 嘘でも『大嫌い』だと言えば、状況は変化していたかもしれない。 なのに俺は、全く正反対の言葉を言ってしまった。 雅隆さんが、俺に触れてくれたのが嬉しくて…。 軽率だった。 あの言葉は、しっかりと雅隆さんの耳にも届いている。 ダメだ……。 まだ身体がだるいせいで、思考が上手く働かない。 ベッドに身を委ねれば、睡魔はすぐに訪れる。 俺は眠りという逃げ場所に、逃避することにした。
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