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「ま、まあ、同じ部屋って言っても……
同じベッドで寝るわけじゃないし」
冷や汗をかきながらも、必死に自身を落ち着かせ、どうにか煩悩を振り払う
「あの……お願いしますッ!」
千昌が、必死に懇願する
「言ったろ?僕に異論はないよ。
母さんが許可しなくても、僕の部屋を譲ってやるくらいの心意気だから」
僕の言葉に、彼女は心底ホッとしたように安堵し、固くなった表情を和らげる
緊張の解けたその表情は、年相応の可愛らしさと子供っぽさを称えていた。思わず、見とれてしまう
「ありがとうございます。えと……」
「彰。水野 彰だよ」
「ありがとうございます、彰さん」
そう言って、無邪気に微笑む
彼女には驚かされてばかりだ。
こんな良い表情をするのなら、ずっと笑っていればいい。うちの高校の男子くらい、簡単に落とせるだろうね。
「あ、そう言えば……
千昌ちゃん、高校はどうするの?」
ふと思い出したように、環が吉野さんに問い掛ける。遅い、遅すぎるよ
「彰くんと同じトコに転入させるわ。手続きは済んでる。2組……だったかしら?」
同じクラスじゃないか。うちが居候を断ったらどうするつもりだったんだろうか
「制服とかも買い揃えないとね。今日はもう遅いから、必要なものは明日買いに行こうか」
幸い、明日は土曜日だ。まあしかし、僕は一日をベッドと共にする気でいたが
「あんたも連れてくわよ?」
聞けば、買い物が結構な量になるので、荷物持ちが必要になるんだそうである
ついて行くことに異議はないが、半ば無理矢理と言う形には納得いかないな
「やれやれ……」
気づけば、自然と溜息が漏れていた
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