出勤。

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しかし金本はびくともしない。周りがくすくすと笑いだしたが全く起きないので、隣の佐藤が起こすとゆっくりと起き上がって肩につく位の髪を手で梳いて前を向いた。目が合って。 【美月さん、美月さん】 ああ、そういえば新任式で寝てた女子。間違いなく金本美月だった。日の光が眩しいのかくしゃっと眉間に皺を寄せて目を細めている。 俺ははっとして、『金本、これ答えて』と言って黒板を指した。金本は瞬時に目を丸くして(本当は目がでかいんだ)ゆっくりと立ち上がった。ぎーっと椅子の引く音が教室に響いて、金本は『過酸化……過酸化水素とナトリウム?』と自信なさげに呟くように答えた。合っていたから少し驚いて 『正解。座っていいけど寝るなよ』 『すいません……』 金本はそう言い、少し顔を紅潮させたまま座った。しかしその五分後にはまた爆睡していた。
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