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凶暴な怒りをおさめたくて、ツイッ・・・と憲兵達から目を逸らす。
所長は、位の高い貴族。
だからなのか、所長室は豪華絢爛。・・・きらびやか過ぎて、いささか研究所の景観を損ねるのではないか・・・と、思うほどだ。
軽く拳を握り、飴色の扉を叩く。
奥から短い声が響いたのを聞いてから、僕は扉を開いた。
ハッとする。
部屋には、所長しかいないと、勝手に思い込んでいたから、もう二つあった人影に、少々驚いた。
まだ年若い、二人の青年。
一人は、精悍な顔付きに、美しい黒髪の青年。
もう一人は、長い前髪が顔を隠し、陰鬱とした雰囲気を漂わせる青年だ。
「なんだね?」
いつまでも黙ったまま突っ立っている僕を不審に思ったのだろう。
所長が、訝しげに声をあげた。
「あっ・・・も、申し訳ありません。これ・・・今日の研究報告書です」
慌てて、手に持っていた報告書を所長の前に突き出す。
所長は、少し驚いた様な顔をして、それを受け取った。
「ほぅ・・・君がジギィか。話は聞いているよ。なんでも、とても優秀らしいじゃないか」
まさか、名前を知られているとは思わなくて、僕は思わずドキリとした。
「なら話は早い。この二人を・・・研究室に案内してやってくれないか?」
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