月夜に唄えば -ある男の章-

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この二人・・・というのは、もちろん、この二人の青年の事だろう。 「はじめまして。私はスリナム。よろしくお願いします」 精悍な顔付きの青年が、ニッコリと微笑んだ。 スリナム・・・という名を聞いて、背筋に電流が走った。 スリナムといえば、貴族会の長を代々務める、最高位の貴族・・・“ケルト”家の、現当主の名だ。 「俺は・・・・・・ケイオスだ」 陰鬱な雰囲気を持つ青年は、スリナム様よりも少し幼い。もしかしたら、まだ少年という年かもしれない。 ケイオスという名にも聞き覚えがある。 きっと・・・位の高い貴族に違いない。 「よ・・・よろしくお願いします」 僕は深々と頭を下げ、二人に背を向け歩き出した。 三級・・・いや、四級の貴族である僕が、こんな二人組と歩く事など、本当はありえない。 一挙一動に、細心の注意を払う。 「ジギィさん」 ふと、背後から明るい声で呼び止められた。 この声は・・・スリナム様だろう。 小さく返事をして、振り返る。 「中庭ヘ出ませんか?この建物は、真っ白過ぎて、目が痛くて」 照れた様にはにかむ笑顔に、思っていた以上の幼さを感じた。 「しかし・・・」 チラリ・・・と、隣に立つケイオス様ヘと視線を投げ掛ける。
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