月夜に唄えば -ある男の章-

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「俺は・・・先に行く。気にするな」 ボソッと呟いたまま、ケイオス様はフラフラと行ってしまわれた。 場所・・・知っているのだろうか? 「アイツは変わり者だが、いい奴なんですよ」 それを僕に言って、どうしてほしいのか。 とにかく、スリナム様の心象を悪くしない様に、笑顔でうなずいた。 それから・・・ スリナム様にうながされるままに、中庭のベンチに腰を下ろした。 「ねぇ、ジギィさん」 「なんですか?」 「あなたは・・・この研究所を・・・どう思いますか?」 僕を見詰めてくる瞳には、言い知れぬ力を感じる。 「どう・・・と言われましても・・・」 本当の気持ちを、話していいのか・・・悩む。 僕は、この研究所をひどく軽蔑し、嫌っているけれど、それを所長に知られたら・・・・・・いや、考えるのはよそう。恐ろしい。 「私にはね・・・愛する女性がいるんです」 スリナム様は、空を見上げながら、ニッコリと微笑んだ。 「ルネッサという人なんだけれど・・・私の事を、とても真剣に愛してくれるんですよ」 その瞳には・・・深い深い慈しみの思いが映っている。 「私は・・・彼女を守りたいのです」 響いた声に、ドキッと心臓が跳ね上がった。 僕と・・・同じ考えーーーーーーーーー・・・
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