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僕も大切な女性を守りたくて、この研究所に入った。
「貴族会でこの研究所を視察した時・・・私は・・・もし、この実験の矛先が彼女に向いたら・・・と・・・思ったら・・・いてもたってもいられなくてーーーーーー・・・」
研究所に入れば・・・きっと・・・守る事が出来る。
同じ事を考え、今、ここにいる。
「彼女にも・・・いつか生まれてくる私達の子供にも・・・幸せに生きて欲しいのです」
「・・・わかる・・・気がします」
苦笑を浮かべ、スリナム様の言葉にうなずく。
「僕の妻は・・・娘を産んだ後、逝ってしまって。・・・彼女に約束したんです。娘を守る、と」
僕の声が好きだ、と、彼女は笑っていた。
笑って・・・死んでいった。
僕は、彼女の身体が悪くなってる事にすら気付いてやれなかったのに。
それでも・・・僕を愛している、と・・・笑ってくれたから。
だからせめて・・・彼女の残した娘だけでも・・・守ってやりたくて。
この研究所に・・・入った。
今は、月に数度しか会う事が出来ないけれど・・・それでも、あの娘の笑顔を守る事が出来るなら・・・それでいい。
「・・・そう、ですか」
スリナム様の声にハッとして顔を上げると・・・そこには、穏やかな笑顔があった。
「お互い・・・守れればいいですね。大切な人を・・・」
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