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大切な人を守りたい。
そう言って笑った彼に、自分と同じ鉄は踏ませたくないな・・・と僕は思った。
こんなに優しい笑顔で笑う男を、僕は初めて見たから。
「明日から、僕もケイオスもジギィさんの研究者に入ります。よろしくお願いします」
明るい声。
この笑顔が消えなければいい。
この地獄の様な場所で。
笑顔を奪われた仲間なら、沢山目にしたから。
だから・・・笑顔が消えなければいい・・・と、僕は切に願うのだったーーーーーーーーー・・・
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「ジギィさん、この細胞の分裂の事で・・・・・・って、どうしたんですか?ニヤニヤして」
分厚い資料の山を手に掴みながら、首を傾げるスリナムに、ジギィは苦笑した。
「先日、娘が会いに来てくれましてね」
「へぇ!!ジギィさんの娘さんかぁ。今おいくつなんですか?」
「今年で20になります。あの年頃は、成長が早いものですよ」
だが娘は変わらず笑顔で自分の事を“父さん”と呼んでくれて。
それがたまらない程に嬉しかったんです・・・と、ジギィははにかんだ。
「早く実験が終わって、娘と一緒に暮らしたい」
淋しい思いばかりさせているから。
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