月夜に唄えば -ある男の章-

9/21
前へ
/21ページ
次へ
「ルネッサ!!!」 バンッと扉を叩き開け、スリナムが声をあげた。 「スリナムさん」 病室の白にはえる、肌の白い美しい女が、ベットに座り声を上げる。 その表情は、驚愕・・・喜び・・・安堵が垣間見えた。 「大丈夫か?ど、ど、どうしたんだっ」 女の・・・ルネッサの笑顔を見て安心したのか、スリナムがヘナヘナと崩れ落ちながら、ふるえる声を上げた。 「病院ですよ、坊ちゃま。お静かに」 ベット脇に立っていた初老の女が、困った様に微笑みながら声を上げた。 「クナ!!ルネッサの病状は!!?」 初老の女・・・クナの首には、タバサの紋章。 自分よりも身分の高い人間しかいないこの場所に、ジギィはひそかに身を固くした。 「落ち着いて下さい、坊ちゃま。・・・おめでたですよ」 クナの言葉に、スリナムもジギィも固まった。 おめでた・・・という言葉に、ベットに座ったルネッサが頬を赤らめる。 その右手は、腹に添えられている。 「双子なんですって」 はにかむ様に笑って、ルネッサがスリナムを見た。 スリナムは、先程から固まったままだ。 理解力がついていけていないらしい。 フリーズしたままのスリナムの背を、ジギィがトンッと押した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

817人が本棚に入れています
本棚に追加