315人が本棚に入れています
本棚に追加
世界を美しいと思う。
こんな時は。
どうして桜は
ピンクなんだろう……?
なんて意味不明な自問も、この太い幹の上に広がる花を見ているとマトモに思える。
花びらが風に舞って、まるで絵のように彼女の周りに降った。
ユズノ
柚乃の視界は今、全て桃色の乙女ちっくな色で埋まっている。
他の色など受け入れない。
あー、きれい。気持ちいい。
うっとりと、背中を桜の木に預けながら思った。
「入学式なんて……おちゃのこさいさいだぁ……」
あんまり桜の色香にやられているので、よく分からないことを口走っている。
しかし彼女には、目の前に広がるこの風景の方が偉大だった。
校舎の中庭にズラリと並んで、そのどの枝にも、美しい花々を咲かせている桜の木。
その頭上には、春の暖かい日差しが、あまりに心地よく陽を落としている。
それに照らされて、桜の色は一層 際立ってピンクに透けていた。
「きれぇーすぎる……」
とろけそうな口の回りで、素直すぎる感想を柚乃はこぼした。
最初のコメントを投稿しよう!