Vol.1

5/22
前へ
/370ページ
次へ
  正直、否定はできない。 結びかけの弁当袋の端はガタガタだし、箸を収めた箸箱は、あからさまに袋から飛び出している。 しかし、彼女はそれすら気にしない。 「包めればいーのよ、包めれば」 という感じがポリシーなので、そんな細かいことまで気にしないのだ。 「はぁ~っ……何か病むなぁ」 「何で?」 食後の紅茶をズズーッと吸いながら、弥生が尋ねた。 彼女は紅茶は、ストレートの方が好きらしい。 ちなみに柚乃は紅茶は嫌いだ。 お茶が甘いだなんて、彼女は納得できないのだ。 「うんー……なんか何もかも。そういう時ってない?」 机に突っ伏して、腕の中に顔を埋めながら、柚乃は弥生を見上げた。 「あぁー…ね。何か分からなくもないかな。 ヒマなのは平和でいいけど、あんまり何もなさすぎると退屈よね」 「うん……」 「そうしてると、何故か無性に悲しくなるよねー。 人って平和を通りすぎると、退屈になって、退屈を通りすぎると、今度は嫌になるんだわ」 「そうなんだよねぇ~。本当、人間ってゼイタク」 「しょうがないわよ。だって、本当にヒマなんだもん。 高校生って、もっと楽しいもんだと思ってた」  
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

315人が本棚に入れています
本棚に追加