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最後の方は、まるで独り言のように吐き捨てて、弥生は黙り込んだ。
そうして、赤い花のコサージュがついたカバンを、机の横から取り、その中をあさって雑誌を取りだす。
普通の女性向けファッション雑誌。
怖いくらい細すぎる美女達が、可愛らしく微笑んで、ポーズを決めている。
弥生は、それを無造作にパラパラとめくりながら、誌面に目を移した。
残された柚乃は退屈だが、こんなのはいつものことだ。
彼女たちは、お互いを縛り合うような友好関係じゃない。
というより、そんな友情しか友情と認められないのなら、柚乃は友達などいらない気さえする。
馴れ合う事だけが、友情じゃない。
かばい合う相手だけが、理解者じゃない。
空気のようにいつもいて、お互いのプライバシーは個人として守り抜く。
相手も自分も、それを理解した上で、こうして一緒にいるのだ。
けれど──…。
あたしは、弥生といる時は安心できる……。
こうして、ただ向かい合っているだけでも、安心できる何かを二人は持っている。
それこそが、柚乃と弥生の友情であり、自分をさらけ出せる要素であるのだ。
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