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「はへっ!?」
瞬間、何がどうなったのかサッパリ理解できず、柚乃はキョロキョロと挙動不振に辺りを見回した。
「あれ!?みんなは?あれっ?」
教室内をぐるりと見渡すと、そこはもぬけの空だった。
「多分、みんなもう授業に行ったと思うけど……
次の古典、図書室で百人一首調べるって話になったらしいから、移動したんじゃないかな?」
気の毒そうにそう言われて、柚乃は「えぇ!?」と彼に向き直った。
「え!マジで!?」
「うん」
「えぇ~、聞いてないよぉ……」
「だよね。オレも実は行きそこねちゃって……」
「そうなの?」
「うん。昼メシ違うとこで取ってたら、うっかり寝ちゃっててさぁ。
放送してたのは聞いてたから知ってたんだけど……もう今さらなぁ、と思って」
はにかんだように「あははっ」と笑い、向はポリポリと頭を掻いた。
その様子があまりにも爽やかで、柚乃も思わず顔がゆるんだ。
「あははっ。ダメじゃあん」
そういえば、向とちゃんと話すのは、これが初めてだ。
彼は、校内でも1、2を争うモテモテ君だし、特に関わりのない人であった。
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