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その一挙一動が、噂のとおり爽やかで明るくて可愛くて、柚乃は恥ずかしい気分になる。
あ、あたし、向くんとこんな話してていいのかなぁ……。
少しうつ向いて、気まずそうに視線を泳がす柚乃。
そんな柚乃を見て、向が不思議そうに言った。
「どしたの、伊藤さん?
何かおとなしくなったねぇ」
「へ!?そう?」
「うん。何か具合悪い?」
そう言うと向は、柚乃の方に手を伸ばした。
「……っ…?」
何をするのかと思って、少し身を固くしていたら、彼は柚乃の前髪を割って、彼女のおでこに手を置いた。
「………?」
突然、少し低体温な冷たい手のひらが触れて、柚乃は怯んだ。
「あー……ちょっと熱いかな?
大丈夫?」
逆の手で、自分のおでこを触り、彼は柚乃の熱を測る。
「あははっ……、何か家出る前、ちょっとダルかったんだよねー」
横の髪を指で軽く上げ、柚乃は平静を装って笑った。
向は、「ふぅーん」と言って、柚乃の額から手を離す。
「ダメだよ、伊藤さん。
体調悪い時にはムリしちゃ」
少し怒ったように口を尖らせ、上目使いに向は言った。
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