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今日は記念すべき高校進学の日……そう、入学式だ。
体育館に向かっているらしい、柚乃の仲間の新入生たちが、彼女のいる中庭の渡りローカをぞろぞろと歩いていった。
しかし、彼女は立ち上がらない。
ただボーッと、よく自分が高校に上がれたものだ、と桜の香りを感じながら考えていた。
「こんな日は、あったかいトコでお昼寝するのが一番なのになぁー」
空を仰いで口を尖らせ、彼女は呟いた。
分かってはいるのだ。
そろそろここから立って、体育館へ行かなければいけないことくらい。
さもなくば、せっかくみんなが現れる前から、いそいそと学校に来ていたはずなのに、入学早々 遅刻という大恥をさらしてしまうことになる。
「それだけは避けたいなぁ……」
うーん、と唸りながら、柚乃は伸ばした足をバタつかせた。
「こぉんな天気のいい、気持ちいい日に、あんなにせかせかと動いてるなんて……。さすがは経済大国、日本だわねぇ……」
と、渡りローカを歩く新入生たちを遠い目で見ながら、ため息混じりに呟く。
社会の成績がオール2だった女が、なにを日本の情勢を語っているのかと思うが、そこはあえてスルーしよう。
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