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しかしやっぱり、もう生徒の姿も少なくなってきたし……。
時計を見ると8時55分だ。
入学式は9時開始という話だったから、そろそろ危ない。
「ふうっ。行きましょうかねぇ」
「ドッコイショ」と、若者らしくない掛け声を出し、柚乃は芝生から立ち上がった。
尻についた細かい葉を、手のひらでパッパッと払う。
美しい桜に名残惜しそうに別れを告げ、彼女は一歩を踏み出した。
セイト
「星人くぅーん!早くしないと、もう入学式始まるよー!」
突然、いやにかん高い女の声が聞こえて振り返った。
見ると、反対側の渡りローカに女生徒が一人いる。
新入生の分際で、スカートは膝上、髪は茶色の巻き巻きで化粧もガッツリ。
見たまんまの“ギャル”だ。
今時は、コギャルなんて言い方は古いだろうか。
そのギャルが、柚乃のいた桜の木に向かって、さかんに手を振っている。
「?」
不審に思って見ていると、柚乃が座っていた桜の反対側から、男子生徒が現れた。
「!?」
驚いて目が丸くなる。
どうやら、柚乃の反対側に、彼も座っていたらしい。
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