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「はんだ、こりゃ?」
「は?何?」
箸をくわえたまま、携帯を見つめる少女。
イトウ ユズノ
伊藤 柚乃(16)高1。
誕生日は夏なので、もうとっくに終わってしまった。
夏休み開けには散々、あの夏の思い出を友人と語り合った。
そんな夏休み開けのグッタリ感にも多少、慣れてきた10月後半のこの日。
「へぇ、見へ見へ、ほへ」
「あの。何、言ってんだか分かりません。
最初っから分からない。"はんだ、こりゃ?"はギリギリ分かったけど」
げんなりとした顔で、おかずを箸に刺したまま
マナベ ヤヨイ
真鍋 弥生(16)高1、は柚乃に言った。
柚乃はその言葉に、キョトンと目を丸くして、口の中のご飯を急いで呑み込む。
「ゴクッ。最初のは、
"何だ、こりゃ?"でねぇ。
今のは
"ねぇ、見て見て、これ"」
「あぁ、うん。分かった。言われたら分かるんだよね。
……で?何が?」
出来る限り、必死に伝えようとした柚乃をなめらかにスルーして、弥生は先を促した。
「………これ」
少しだけ不機嫌そうに目を細め、柚乃は携帯を弥生に向けた。
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