序章

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長い、長い坂。 今年も桜の花が満開で、この季節が来る度に憂鬱さを感じる。 また廻る一年。 つまらない毎日。 何かを求める気力なんかはとっくに失せて、何もしなくても勝手にやってくる明日を ただ呆然と待っていた。 長い、長い坂。 ふと先に 人の流れの中で止まっている生徒が一人。 坂の先に見える学校を見上げ小さく深呼吸をしている。 ただの、なんてコトない一人の生徒。 でも俺は どうしてか、その生徒から目が離せなかった。 理由なんてわからない。 ただなんとなく。 「あ、あなたは……」 その生徒が振り向く。 真っすぐで、でも先が見えない深い瞳と目があう。 「あなた、は…この学校は好き……ですか?」 何かが廻り始めた。 長い、長い坂の途中で。 何かが。
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