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第1話:事の発端
けたたましく警報が鳴り響く中、部屋にいた士官を含むオペレーター達は騒然としていた。
「状況報告急げ! 何が起こっている!」
激昂した士官は冷静さを欠き、声を荒げてオペレーターに命令を出す。
命令を出されたオペレーターも焦りと苛立ちを隠せない様子でそれに答えた。
「一級戦艦〈コウツキ〉〈ヨラ〉〈シタカ〉ともに信号途絶! その他、個人からの通信もありません! 何者かの攻撃を受けた模様です!」
「それはもう聞いた! いったい何に攻撃されたんだ! 艦長らからの通信は!!」
「何度もコールしているのですが、応答なしです! こんな……こんな事態、今までにありません!」
半狂乱になりながら、士官に報告するオペレーター。
応答がない理由を考えずにはいられなかった。
現実空間から仮想空間へと入り込み、そこで戦いを繰り広げる昨今。例え仮想空間で何かがあったとしても、安全装置により中枢神経が侵される前に“切り離し”が行われる。
今回のように何らかの事件が起こった場合は、何をしなくても仮想空間から戻った兵士達によって報告がある。
しかし、この時に限ってその報告がない。誰一人として応答がないのは異例中の異例だった。
「ダイブルームを偵察にいった警備から通信…………え?」
オペレーターの顔色が変わる。
「どうした?」
不思議に思った士官が、オペレーターに問い掛けた。
「全員…………死亡」
それを聞いた士官も、一気に青ざめる。
「全員が死んでいたのか……?」
確かめるように士官が呟いた。
「はい」
「どういうことだ。……安全装置が作動するよりも早く、神経にこれだけ大量の、そして直接的にダメージを与えられる存在は何がある?」
その芸当が出来る存在。それを士官は知っていた。しかしそれでも、問わずにはいられなかったのである。
「自立式攻撃型フェアリー、001ASL。通称“ソル”です」
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