第1話:事の発端

1/10
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

第1話:事の発端

 けたたましく警報が鳴り響く中、部屋にいた士官を含むオペレーター達は騒然としていた。 「状況報告急げ! 何が起こっている!」  激昂した士官は冷静さを欠き、声を荒げてオペレーターに命令を出す。 命令を出されたオペレーターも焦りと苛立ちを隠せない様子でそれに答えた。 「一級戦艦〈コウツキ〉〈ヨラ〉〈シタカ〉ともに信号途絶! その他、個人からの通信もありません! 何者かの攻撃を受けた模様です!」 「それはもう聞いた! いったい何に攻撃されたんだ! 艦長らからの通信は!!」 「何度もコールしているのですが、応答なしです! こんな……こんな事態、今までにありません!」  半狂乱になりながら、士官に報告するオペレーター。  応答がない理由を考えずにはいられなかった。  現実空間から仮想空間へと入り込み、そこで戦いを繰り広げる昨今。例え仮想空間で何かがあったとしても、安全装置により中枢神経が侵される前に“切り離し”が行われる。  今回のように何らかの事件が起こった場合は、何をしなくても仮想空間から戻った兵士達によって報告がある。  しかし、この時に限ってその報告がない。誰一人として応答がないのは異例中の異例だった。 「ダイブルームを偵察にいった警備から通信…………え?」  オペレーターの顔色が変わる。 「どうした?」  不思議に思った士官が、オペレーターに問い掛けた。 「全員…………死亡」  それを聞いた士官も、一気に青ざめる。 「全員が死んでいたのか……?」  確かめるように士官が呟いた。 「はい」 「どういうことだ。……安全装置が作動するよりも早く、神経にこれだけ大量の、そして直接的にダメージを与えられる存在は何がある?」  その芸当が出来る存在。それを士官は知っていた。しかしそれでも、問わずにはいられなかったのである。   「自立式攻撃型フェアリー、001ASL。通称“ソル”です」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!