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──FRP演習教室内──
「バカもんがぁぁぁっ!」
思わず耳を塞ぎたくなるような大声が、葵を含めてその場にいる生徒十数人の耳を刺激する。
FRP訓練顧問の木下だ。
一昔前のステレオタイプな体育教師の格好。所謂Tシャツとジャージ姿で怒鳴ってくるものだから、冬という今の季節を考えても必要以上に暑苦しく感じてしまう。
この角刈り頭になぜ怒鳴られているのか今一理解できない葵は、反抗的な態度でその言葉を聞く。
「隠密機動の訓練中に、サイレンサーを解いて突貫する奴があるかぁぁぁっ!」
そう言われてみればそうかと、葵は一人納得する。
今さら気付いたという態度が気に食わなかったのか、木下は辺りを見回して何かを探すそぶりをし始めた。
「葉山、お前は確か岩代班だったよな?」
岩代という名前が出た事に、その場にいた少女の一人がピクッと反応する。
木下の目線の先にいるのは、黒髪とポニーテールが印象的な女の子。
身長は目立って低く、前に聞いた話しだと高校を卒業するまでに150cmくらいには伸びてほしいんだとか。
そんな彼女は自分の名前を呼ばれた事に過敏に反応し、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「岩代有里、赤間翔太、そして葉山葵の三名は、連帯責任でダイブ用ポッドの清掃をすること」
「えぇー!」
声を上げたのは翔太だった。恨めしそうに葵の方を睨むと、俯いて溜め息を吐く。
そしてもう一人、葵の背後に忍び寄る影。
「葵、あとで覚えといてね」
振り向くと、葵の視界にちょこんと頭が映る。
そのまま視線を落すと、我らが班長“岩代有里”の姿があった。
「……そ、そんなに怒るなよ」
なんとか宥めようとするが、こちらの話しを聞くことなく有里はその場を後にした。
残された葵の肩を翔太がポンポンと叩く。
「間違いなく“岩代パンチ”だな」
御愁傷様と言わんばかりに翔太は呟いた。
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