第1話:事の発端

8/10
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「……葵様、ちなみに今日のおやつは何だったんですか?」 「カス巻きだ」 「…………」  葵は手に持った鞄を机に置くと、脇にあるベッドへと転がる。  そして仰向けになると、右手を腹の上に置き、左手で何も無い空間を指差した。 「オープン」  言葉と同時に何も無かった空間に光が灯る。  それは瞬時に広がり、半透明の“モニター”が出現した。 「カス巻きならカス巻きって早く言って下さい! それは黒餡ですか!?」  叫び声が響くと同時に、モニターの右端から人影が飛び出した。  薄い紫色の髪がフワリと揺れ、不安そうな顔をした少女が現れる。  身長は15センチくらいだろうか。白を基調にした服を着ているため、一見は清楚な感じである。  フリルの付いた膝上までのスカートが印象的で、そこから伸びる白い脚は黒いニーソックスに隠れて大腿部しか見えない。 「黒餡だ」  冷たく言い放つ葵。  対するライラは、頬を膨らませて不機嫌さをアピールする。 「この外道が……葵様がそんな意地悪するなら、私今日は部屋に帰らせていただきます!」  そう言って、ライラは画面の端から消えた。 「あっ!」  が次の瞬間、何かを思いついたのか、画面に映っていないライラの声が不意に響く。  そして、葵の顔色を伺うようにして、ライラは画面の端から顔を覗かせた。   「どうした?」  ライラの不思議な行動を疑問に思った葵は、画面端に現れた彼女に聞いた。 「あの、実はお話があってですね……」  ライラは改まった様子で話を続ける。  モジモジしながら躊躇う姿から考えるに余程の事なのだろう。 「どうしたんだ? まさか、前に余分にやってたおやつを全部食べてしまったとか……じゃないよな?」  葵の言葉にピクッと反応するライラ。 「あの、それもあるんですけど……」 “それもある”というのは少々引っ掛かるが、それよりも話の続きが気になる。 「じ、実はですね……あの、友達が、出来たんです」 「はぁ?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!