二話

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何が何でも顔を上げない。 例え評定1になろうとも─それはかなり困るのだが─この姿勢を貫き通すと決めた。 しかし、頭上からはぁとため息が聞こえ、 「赤坂ぁっ!!」 「はいぃぃっ!!!」 普段西野が出すこともないような怒声に身の危険を感じた。反射的に顔を上げてしまう。 ばちりと、目が合った瞬間春馬は人生の終わりを感じた。 想定以上に顔の距離が近かったのだ。 刹那、顔が炎に当てられたように熱くなって、泣くかもしれないと思った。 この場合は嬉し涙なのか悔し涙なのか、そんな悠長な考えすら頭をよぎりはじめる。 きっと、赤ん坊が泣くのと同じで、わけがわからないから泣きたいんだと思った。
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