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「大丈夫なのか?」
廊下に聞き覚えのある落ち着いた声が響く。
日が射しぼかぼかと暑い昼下がり。
電気など点けなくても、外からの陽光が眩しい。
その廊下、ちょうど、保健室の前で事は起こっていた。
「だいじょぶ、です」
もう一つの声は心なしか震えている。
その状況に居合わせてしまって、柚奈はギクリと足を止めた。
とっさに不自然でない程度に隠れる。
特におかしな光景でも無いはずだった。
西野先生が、男子生徒の肩を掴んで呼び止めている。それだけの光景だ。
しかし、柚奈の頭に昨日の透子の言葉がよぎる。
『西野先生ね、彼氏いるんだって』
噂かもしれない、と何度か頭を振った。
しかし一度思ってしまうと疑念はなかなか消えてくれなかった。
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