三話

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「大丈夫ですから…っ」 男子生徒が西野先生の手を振り払って、ちょうど柚奈のいる方向に駆け出す。 何故か柚奈は息を潜め、身を固くしていた。 ─見てはいけないものを見てしまった─ そう感じた。 男子の走り抜ける瞬間、顔を見ると、どこかで見たことのある顔だった。 短めの黒髪に、色素の薄い瞳。 第一印象で肌の綺麗な人だと思った記憶がある。 女の子のようにきめ細やかな肌でも、体つきや骨格はしっかりとしていた。 だが見かけた事がある程度だ。 (確か…透子ちゃんのクラスの…) 名前は、知らない。 柚奈は漠々とした目で彼の後ろ姿を見つめ続けた。
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