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「大丈夫ですから…っ」
男子生徒が西野先生の手を振り払って、ちょうど柚奈のいる方向に駆け出す。
何故か柚奈は息を潜め、身を固くしていた。
─見てはいけないものを見てしまった─
そう感じた。
男子の走り抜ける瞬間、顔を見ると、どこかで見たことのある顔だった。
短めの黒髪に、色素の薄い瞳。
第一印象で肌の綺麗な人だと思った記憶がある。
女の子のようにきめ細やかな肌でも、体つきや骨格はしっかりとしていた。
だが見かけた事がある程度だ。
(確か…透子ちゃんのクラスの…)
名前は、知らない。
柚奈は漠々とした目で彼の後ろ姿を見つめ続けた。
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