プロローグ

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窓の外を見つめていた。 癖のついた長い髪を右手で弄りながら、少女は窓の外だけに集中していた。 今は授業中で、集中すべきは黒板のはずなのに、どうにも落ち着かない原因が外にあった。 それは、体育。 違うクラスのものだ。 ソフトボールをしている。 少女はそれを熱心に見つめていた。 教室は流暢な英語で満たされている。外では炎天下で女子のソフトボールが繰り広げられている。 今、ピッチャーが三球目を投げた。試合は四回の表。1―4で、後攻側が勝っている。 運動の苦手な女子が、ピッチャーの球を大袈裟に空振った。 これで三人三振。攻守交代。 思わず、手に汗を握り締めていた。 外は7月の太陽が照りつける真夏日。 教室にもむわりとした空気が満ちている。 クーラーなど付いていないから当然暑いが、外よりはマシだろう。 遠く、うっすらと陽炎が見える。 少女はこっそりとため息を吐いて、窓から視線を外した。 7月は暑い。 顔が火照って、しかたがなかった。
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