一話

4/7
前へ
/69ページ
次へ
しかし、今日は透子が一緒だ。 いつもは涼しい筈のこの道が、今日はやけに顔が熱く、落ち着かなかった。 葉が一斉にざわめく様が、大勢にひそひそ話をされているようにさえ聞こえる。 その木々のざわめきが、自分の罪を見破り噂しているようで変にそわそわする。 しかし、それでも柚奈は自分がにやけていないか心配で、出来るだけ透子と顔を合わせないようにして帰ろうと決めた。 「そういえばさ、柚奈」 「何?」 呼ばれて、ふと顔を合わせてしまう。 決意は驚くほど脆く早くに崩れた。 その事実に目が合ってから気づき、途端に恥ずかしくなって、柚奈は取り繕うためにパタパタと顔を一生懸命扇ぐ。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加