こんな時代に生まれても

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「ねえ、」  「なんだよ」  カシャン、と 音立てて、フェンスにもたれかかる 冷静な受け答えは周りから見るときっと不自然極まりないだろうが今となっては人なんて見当たらない 見上げた空は黒く炎や煙で汚れきっていた 「終わるね?」 「終わりだな」         ・・ あーあ、と残念な振りをしフェンスから離れて、屋上の白い壁にもたれる貴方に近付く 学校、工場、警察 全てからサイレンが鳴り始める 「うるせえなぁ」 くしゃりと自分の髪を指ですく貴方の横顔が綺麗で思わずみとれた 耳鳴りが酷い 脳が告げている、のだろうか? どこまでも生きようともがく自分は醜い 自潮の様な笑みがお互いから漏れる しょうがない 全てしょうがないのだ しょうがないから10年分の想いを告げよう 「ねえ、大好きよ」 「偶然だな。俺もだ」 渇いた笑い サイレン 耳鳴り そんな中カチ、と機械的な音が重なる 互いの手の中 黒く光る機械 これを人間の作ったものだと思うと吐気が襲う そして私達も人間  「だからさ」 「一緒にな」  「永久にしようか」 「俺達を影にして」 重ねる様に言葉を吐く 溢れ返る想いを残して 俺達を永遠にしよう 「「一緒に」」 彼の頭、私の頭につきつけられたもの パァン. こんな時代に生まれても (永遠に愛してるから綺麗なままで) (ねぇ)(なんだよ)(大好きだから)(俺もだばかやろー)
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!