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「金村、初めて見たよ…ゲロまみれで体中掻いてる人」 「俺もだっつーの。なんかバリバリって掻く音が聞こえるようだ」 「街中停電で車も止まってパニックになってるのかな」 「パニックじゃああならねえよ。あ、血が」 「オェエ、頭から流血とかどれだけ強く掻いてんだよ」 「おいおい、あのこのままじゃオッサン死んじゃうんじゃねえか?出血多量で」 「ごめん、俺気持ち悪いから反対側の窓見とくよ。オッサンの服血まみれだし手も真っ黒だし」 「あ、吐いた」 「またゲロかよ」 「いや、今度は血っぽい。色が黒い」 「え…血かよ、見なくても気持ち悪い…」 「倒れた。多分死んだな」 「そうか。ご臨終だな。なーむー」 「そういえばお前、こんな状況なのに意外と焦ってないんだな」 「何言ってるんだ、焦ってるに決まってるでしょ…さっきから汗が止まんない」 「でも俺が思ったよりずっと冷静だぜ?俺はてっきりびびって気絶するかと思った」 「気絶はないだろ」 「なら悶絶か?」 「なんで悶絶しなきゃならないんだよ」 「ならなんでだよ」 「分かるだろ。妻も娘も事故で亡くした俺にとっては、こんな世界もうどうだっていいんだよ。娘はまだ、3つだったのに!」 「…そうだったな」 「でも俺は「もう死んでもいい」なんて思わないけどね。俺は自分が1番かわいい、最低な人間だ」 「それが普通だって。俺だってそうさ。誰かの為に自分の命を捧げたくない。結婚は…してないけどな」 「って、なんでこんな話に。この狂った世界の状況をもっと知らなくちゃ」 「俺が推測するに、多分、フォトンベルトの影響で電子機器全般が使えなくなってんだと思うぜ」 「それは俺も思った。音楽プレイヤーもつかないし」 「外の死んだオッサンもフォトンベルトの影響だと思うが、まだなんとも言えないな」 「多分、外がアウトなんだと思う。外に出ると、あんな風に…」 「でもさ、フォトンベルトっていうくらいなんだから、もっと空が真っ白に光ると思ってたぜ。期待させやがって」 「うーん、確かに光のベルトに地球が包まれたのなら空がこんな暗いわけないよね」 「そうだな…ん?…おい!外見てみろよ!」
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