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 それに引き換え、水の中は心地好いものだった。陰口も無い。陸より自由だ。  しばし水流に身を任せ、流れが緩やかになった場所で、一度水面に出てみた。  そこは、見知らぬ土地の川だった。  戻り方も解らない。  戻りたくも、無い。  一人ぼっちの自分を、水は受け入れた。自分が生きるべきは、陸ではなくて水の中である。  そう悟り、水に棲む身となった。  最初に流れ付いた川は、水も綺麗で穏やかで、棲み心地が良かった。それで長く居たが、次第に雨が多くなり、川が溢れた。清流は濁流となり、女は地下の水脈を伝い棲家を移した。移した先もやがて長雨に見舞われ、それが何度も続いて、女は自分が長雨を呼ぶ事を知った。地の水だけではなく、天の水にも好かれたのだ。
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