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アスファルトが焦げて
僕らの足を焼いた夏の日
麦わら帽子が風に舞った
お小遣い握りしめて店に走り
溶け落ちる早さに負けないようアイスを頬張った
木にくっついた蝉の脱け殻をそっと胸につけて
ブローチだと笑った君は
タンクトップ、むき出しの腕は黒く
うるさいくらいに鳴く蝉たちを捕まえて
お母さんの悲鳴なんて無視してた君は
今
紺のスーツで白い肌を隠して
小さな蜘蛛に金切り声をあげる
僕は虫取網を捨てて
カタログ片手に客を捕まえに走る
疲れた笑顔でお互いに励まし合って
走れもしないパンプスや革靴を履いて
蝉の声は騒音でしかなく
帰りたいねと笑う君に
そうかな、と僕は目を伏せた
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