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「悪かったな……痛かったか?」
お兄さんに謝られ、ぼくは必死に首を振って否定する。
言葉にならなくても、伝えなくちゃ。
すると、頭に軽く重みがかかる。
顔を上げると、メガネのお兄さんが優しく頭を撫でてくれていた。
「ごめんな」
「うっ……うっ……」
お兄さんの手のひらが、ぼくの髪を揺らす。
胸から込み上がってくるものを、ぼくは押さえられなかった。
「………ぅわぁーん!!」
大きな声を出して、泣きじゃくった。
「よし、よし。大丈夫だよ」
「恐かったね~、メガネが」
抱き締めてくれた、お姉さん。
助けてくれた、兎さん。
「メガネのいじめっ子~!」
「ほれ、顔拭かんか」
「えっと………あの……………」
明るい、赤い髪のお兄さん。
ハンカチをくれた、おばあさん。
頼りないけど、優しい先生。
「だから、悪かったって……」
冷たく見えるけど、暖かいメガネのお兄さん。
嬉しい。
今は、言葉に出来ないけど。
しばらく、ぼくの涙は止まらなかった。
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