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「麗っ!!あんたまだ準備終わってないの?先行くよ!?」
「あぅぅ~待ってください時雨~!!」
幼馴染みの、佐藤時雨(さとうしぐれ)。
昔っからどっか頭のネジ吹っ飛んでると言われ続けた私を、我慢強く面倒見てくれてる。
憧れだった地元の高校に、合格を決めたのは一月前。
実感も沸かないまま、今日は入学式です。黒い薄手のセーラーに、真っ赤なタイ、白いスカート。
ついでに短い髪を、昔から使ってる赤いリボンで結いて、さぁれっつらごー!!
「お待たせしました!!」
「ホントだよ、もう!!
どうせあんたのことだから今日も春休みだと思ってたんでしょ?」
「あぅ‥‥っ!!
‥‥時雨、すみません謝るのでそこ触れないでください‥‥っ」
「はぁ‥‥ったく、ホント目が離せないんだから」
行くよ、と囁いて一緒に歩き始める。
私より何cmか高い横顔を眺めながら、ニコニコ。
こんな時は優しい幼馴染みに大感謝、だ。
空を仰げばコバルトブルー。
眩しい春の陽に、目を細めた。
* * *
制服が可愛いのと、
家から近いって気持ちだけで選んだ高校は、本当に近い。
商店街を抜け、踏切りを渡って、
桜が一杯咲き誇る坂を五分ほど登れば、もう見える。
‥‥しかしこの坂が一番辛いのです。
あぁヤバい、もう息切れてきた‥‥!!
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