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「‥‥麗?大丈夫?
あんたやっぱり春休み運動全然してないでしょ‥‥」
「だ、大丈夫です‥‥!!
でも‥‥私が足手まといになったら、先へ行ってくださひ‥‥」
「‥‥昨日はあんた何の映画見たのよ‥‥」
劇画チックな話をしたら、呆れたようで眉を寄せた時雨。
それにヘラっと笑い返すも、やっぱりヘトヘト。
だいたい運動部の時雨はともかく、私は中学から美術部なんです。
美術部に歩かせたり体力つけさせてもぜーったい意味無いッ!!
なーんて心の中で叫び、額の汗を拭って前を向く、と。
「‥‥?」
透き通る、蜜色の髪。
桜吹雪から漏れる陽射しを受けて、きらりきらり反射する。
眩しいその後ろ姿に、思わず目が惹かれる。
あれは、まるで、
「お日様‥‥?」
――――みんなを照らして、頭上で輝く太陽が、まるで地上に舞い降りたようで。
ビックリして目をこすり、もう一度前を向くと、
‥‥もうお日様はどこにもいなかった。
「え‥‥」
「ってヤバいもう始まるじゃん!!
ちょっと麗!!ボーッとしてないで行くよ?」
「え、あ、‥‥はい」
曖昧に頷いて、時雨に腕を取られる。
視界一杯を埋めるのはこの小さな桜色の破片で、
あの一目見て目奪われる蜜色の名残はどこにも無かった。
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