恋色世界

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―――――グイッ。 「‥‥ほぇ?」 叫んだ拍子に、手首を思いっきり掴まれた。 反射的につぶった眼を、恐る恐る開く、と‥‥。 「あ‥‥っ」 蜜色の、髪。 陽に透ける、金色。 長い前髪から、色素が薄く茶色くて丸い、大きな瞳が覗く。 彫刻みたいに綺麗な、だけど冷たい印象の顔立ちから、目が、離せない。 手首から伝わる熱はヒンヤリしてて、熱くなる私とは正反対だ。 形の良い唇が、低い声で囁いた。 どうしてか、こんなにうるさいのにハッキリ聞こえる。 「‥‥大丈夫か?」 「っっ‥‥!!」 ‥‥前言撤回。 自分の心臓の音が、大分うるさい。 何だか顔が熱い気がする。 え?何なの、これ。 どうしちゃったのかなぁ、私。 意味が分からなくて固まっていると、彼は首を傾げて距離を縮め、もう一度尋ねた。 「大丈夫、か?」 「!!はい!!大丈夫です最強です不死身です!!」 途端に大声でシャキッと返事を返した私に、それならいいけど、と無愛想に返した。 うわぁうわぁ、どうしよこの人、本当にお日様みたい。 着崩した黒の制服と対照的な金髪が、すごく似合ってる。 体を起こした時に、耳元からシャラリとピアスが揺れる音がした。 頭を上げて、空を仰ぐ。 そんな仕草が、様になってる。‥‥綺麗。 それを眺めていると、不意に彼はまた私を見た。 「なぁ」 「へっ?」 「待て、ってこれだけか?」
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