恋色世界

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思わず、彼の言葉を振り返る。 ‥‥‥‥‥‥。 「ああっ!!」 「‥‥」 突然大声を出した私に一瞬ビクついていたが、そんなの気にしていられない。 忘れ去ってたリボンのことが、一気に頭に蘇った。 「ど、どうしよリボン‥‥っ」 「リボン?」 「お、幼馴染みにもらったんですけどっ‥‥」 「それが?」 「あ、あの、さっきまでここにいた先輩の制服に引っ掛けちゃってっ。 すみません、助けていただいてありがとうございましたっ!! お礼はまた後日させていただきますねっ」 慌ててさっきの人を追う。 ああ、どっち行ったんだろう、ていうかやっぱり人込み抜けられない‥‥っ!! アタフタして人の流れに押され。 ―――ドンッ。 「あ、すみませ‥‥ん」 さっきの人にもう一度ぶつかった。 な、情けない‥‥!! 半泣きで頭を下げ、もう一度歩き出そうとすると、手首を掴まれた。 不思議に思って顔を見上げると、大きなため息。 な、な、な!? やっぱり態度失礼だった!?なんて一人焦ってると、 彼はおもむろにしゃがみ、私の膝と腰に腕を回す、と。 「‥‥掴まってろよ」 「へっ?ふわ、うわわっ!!」 奇妙な浮遊感。 なんですかこれ、子供抱っこって奴じゃないですか!? 背中を支える大きな掌が、ひどく冷たい。 グラグラしてちょっと怖いから、その首にかじりついた。 私より三十cmは高いだろうその人は、軽々と抱き上げてすぐに、 もう人垣を抜けてしまった。‥‥ていうか若干注目浴びてて恥ずかしいんだけど‥‥っ!!
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