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エルフは岩山にむかって、驚異的な速さで駆けてくる。
シェイドは六メートル下の地面に目をやると、
すばやく岩山を飛びおり、
エルフの目の前に軽々と着地した。
エルフは驚きもせず、 けもの道を
駆けもどっていく。
剣からしたたるアーガルの黒い血が、
地面に点々としみをつけていた。
走っている途中、
怪物アーガルたちが、またもや藪から飛び出してきた。
女エルフをとりかこみ、彼女の唯一の逃げ道をふさぐ。
これで逃げる道はなくなった……
逃げ道がないと悟ったとき、女エルフは直立した。
シェイドは、楽しむかのように、片手をあげた。
「捕らえろ」
アーガルたちが近づいてきたとたん、
女エルフは巾着をあけ、なかに手を入れた。
巾着が地面に落ちる。
手に残ったのは、大きなサファイアブルーの石だった……
表面に、炎の光が反射してきれいだ。
エルフは石を頭上にさしあげ、唇が、とりつかれたようになにかの呪文をとなえはじめる──
シェイドが必死の形相でさけんだ。
「ガージラー!」
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