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シェイドの掌から赤い火の玉がふき出し、
矢のような速さでエルフに飛びかかった……
……が、一瞬遅かった。
森じゅうがぱっと光に照らされ、次の瞬間、
石はすでに消えていた。
赤い火はそのままエルフにつきささり、
彼女はバタリとたおれた。
シェイドは怒りの声をあげた。
シェイドの口から、復習を予言する言葉が響きわたった。
彼にしか理解できないような。
シェイドは空をみあげた。
星たちはまたたきもせず冷ややかに、
別世界の者たちをにらみ返している。
意識のないエルフをふり返った。
人間の男ならだれもが魅了されるだろう彼女の美貌も、
シェイドにとってはなんの意味もない。
石が失われたことをもう一度だけたしかめ、
「ちくしょう」
とつぶやいた。
シェイドはかくしてあった馬を藪からひいてきた。
エルフを鞍に乗せ、自分もそのうしろにまたがると、
森の外へと馬を進めた。
行く手の炎だけを消し、あとは燃えるがままに歩み去った。
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